September 5, 2012

これで良いのだ?

皆さま、領域会議お疲れ様でした。世話役を務めて下さった佐渡さん、そして佐渡研の方々、本当にどうもありがとうございました。

今回の領域会議は、公募研究がずいぶんと入れ替わったこともあり、新鮮で興味深い研究発表が多く、個人的にも大変楽ませて頂きました。芳本さんも書いてくれているとおり、研究内容が多岐にわたり、領域としての幅がぐんと広がったように思います。一方で、それらの研究を「新学術領域」という枠組みで行う意義、つまり、それぞれの研究者の強みを、どうやって領域全体で共有し、活用していくか、ということについてはさらに模索する余地がある様に思いました。例えば、中川さんが(芳本さんの書き込みのコメントの中で)書いてくれているとおり、高分子非コードRNAの研究を、生理機能の解明を行う段階から、作用マシナリーの解析を行える段階にもっていくためには、どうすれば良いのかという点が挙げられると思います。これは、今回の総括班会議の時も話題になりました。

当領域発足時の資料を引っ張り出して見てみると、【真核生物には、数千から数万の莫大な数の高分子非コードRNAが存在し、その多くはこのように組織あるいは発生段階特異的に発現しています。しかし、そのサイズや塩基配列には共通の特徴が見られず、個々の作用マシナリーも多様であると考えられます。これは、共通のエフェクター複合体を持つ小分子RNAとは大きく異なる点です。よって、多様な高分子非コードRNA作用マシナリーの理解を進めるためには、遺伝学的なアプローチを用いて個々の高分子非コードRNAの生理機能を詳細に解析し、その分子機能を予測することが不可欠です。】とあります。今読んでもとても良く書かれた(笑)文章で、「共通のマシナリーが存在しないので、個々の生理機能の解析をしっかりやらないことには、先に進めないのだ」つまり「今はこれで良いのだ」ということですね。まさにそれはその通りで、今は幅広い生理機能に関わる高分子非コードRNAの遺伝学的な解析をしっかりと行う時なのだと思います。一方で、それらが進んだ時にマシナリー解析にすぐ取りかかれるような準備を、すでに生理機能解析がある程度進んだものをモデルとして、(理想的には小分子RNA研究で培われた知見や技術を活用して)進めておくと言うことが非常に重要なのも確かです。

しかし言うは易しで、実際に例えば、XistとPRC2(の各因子)の結合を見る、というようなシンプルなことでさえ、過去に発表されている論文では、定量的に無茶苦茶な条件でやっていたり、論文によってRNAに結合すると結論づけられている因子が違っていたり、なかなか難しいものらしいという印象を受けています。小分子RNAの研究が、粗抽出液を使ったin vitro系の開発によって急速に進んできたように、高分子非コードRNAについても、何かほんの一部でも良いので、生体内で起こっていることをin vitroで再現できるような系ができれば、それがブレークスルーになるのは多分間違いないと思うのですが、

1. そもそも何の反応を見れば良いのか?

2. そもそも粗抽出液で進む反応なのか? (クロマチンという特殊な足場となる環境が無いと進まないような反応なのではないか? もしそうだとすると、その様な環境をどうやって作ってやればよいのか?)

という2つの「そもそも問題」が、小分子RNAの場合と比べてはるかに敷居を高くしている原因なのでは無いかと思います。僕は専門家では無いのですが、このあたり、実際にやっている方々の感覚はどうなのでしょう? (と、ひとしきり書いて、まとめきれずに誰か[たぶん中川さん]にふってみます)

東大・分生研 泊

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